最大28か月分受給できる!?『傷病手当金』と『失業給付金』について

最大28か月分受給できる!?『傷病手当金』と『失業給付金』について



傷病手当金について

傷病手当金は、健康保険で利用できる制度です。病気やけがで仕事を休業せざるを得なくなった場合に、被保険者本人とその家族が無事に生活できるよう、保障することを目的として設けられている制度です。単に入院していればもらえるわけではなく、会社を休んだことで事業主から受け取る報酬が減額されてしまった場合に支給されます。

傷病手当金を受給するには、4つの条件があり、そのすべてを満たしていた場合のみ、支給されるものです。

傷病手当金は、支給が開始されてから最長で1年6ヶ月受給できます。これは、退職した場合でも一定の要件を満たしている場合に限り、引き続き受給することができます。ただし、傷病手当金と失業保険は、併給出来ないという点に注意してください。なぜ併給出来ないのかというと、その理由はそれぞれの支給条件にあります。傷病手当金は「就労が困難な状態にある」事が支給条件ですが、失業保険は「すぐに働くことができる状況にあること」が支給の条件だからです。そのため、働けない間は傷病手当金を受給し、働くことができるようになったら失業保険を受給する、ということになります。

また、傷病手当金は以下の手当とも重複して支給されません。

  • 出産手当金
  • 老齢年金(退職年金)
  • 障害厚生年金・障害手当金

これらは、傷病手当金とそれぞれの支給額とを比較して、傷病手当金の方が高かった場合のみ、その差額分が支給されます。

退職後の給付金が28ヶ月以上受けられる場合は?

ここからは、退職後に28カ月以上給付金を受け取ることができるケースとはどのようなものか、解説します。ここでいう給付金は、傷病手当金と失業保険の給付金のことをいいます。

まず、前提となるのが健康保険と雇用保険、それぞれの加入期間等の要件を満たしているということです。傷病手当金は、退職した時点で1年以上働いていれば、退職後も引き続き受給できます。しかし、1年未満の場合は退職した時点で受給が終了となるのです。雇用保険なら、自己都合での退職は12ヶ月、会社都合であれば6ヶ月以上加入していることが条件です。また、勤続年数によって受給できる日数も異なります。

この条件を満たした上で、在職中に病気になって休職し、その後長期間の療養が必要となって失業したまま過ごすことになった人を例に、28カ月以上受給できるケースを解説します。

在職中に病気に罹患して、それが原因で仕事を続けるのが難しくなってしまいました。そのため、会社を休職することになり、傷病手当金を健康保険に申請します。そのまま何ヶ月か過ごしていましたが、病気が快癒する様子もないので復職できるめども立ちません。そのため、会社から退職の勧奨を受けました。それに従い、会社を退職することになったのです。

退職しても、まだ新しい仕事を探せる状況ではありません。そのため、雇用保険の失業保険については受給期間の延長手続きを行い、回復して仕事を探せるようになってから受給することにしました。

休職してから1年6カ月が経過しても、まだ病気は回復せず働ける状態ではありません。そのため、傷病手当金は最大の1年6ヶ月分を受給しました。

その後、健康状態が回復して働ける状態になったので、改めて失業保険の受給を開始して仕事を探しました。離職時の年齢が47歳で、会社には25年間勤続していたため、失業保険は最大で330日受給できます。現在は49歳になり、前の仕事のキャリアを活かした仕事をしたいと求人を探して応募したのですが、なかなか見つかりません。なるべく早く復帰したいと思いつつ、結局1年近く仕事が見つからず330日分すべてを受給しました。

こういった結果になった場合、傷病手当金が18ヶ月分、失業保険が11ヶ月分受給することになり、合計で29ヶ月分受給する事となるのです。

見ての通り、これは何も裏技ではなく、ましてや不正受給にもなりません。それぞれに決められている受給期間を、最大限使用した結果です。病気が早期に治ったり、再就職先が早期に決まったりすれば早々長く受給できないのです。そのため、該当する状態になってしまった人は遠慮することなく受給しましょう。

傷病手当金受給の条件とは?

傷病手当金を受給するための、4つの条件について解説します。

条件1、けがや病気の原因が業務とは関係ないことです。

業務中や通勤中が原因となってけがや病気をした場合は、労災保険の対象となります。それとは、併用できないのです。ただし、労災の対象とならないのであれば、健康保険の対象となる療養に限らず、診療を自費で受けた場合でも就業が困難な状態であることが証明できれば、支給されます。その際に、入院とはならずに自宅療養する期間があった場合は、その期間も対象に含まれます。自分の都合で受ける美容整形などの手術については支給対象外なので、注意しましょう。

条件2、就業が不能な状態であることです。

その判定は自主判断ではなく、療養を担当する者の意見なども聞いて、被保険者がどのような仕事をしているかも踏まえたうえで、健康保険の担当者が判断します。

条件3、仕事ができなかった日数です。

傷病給付金には、待期期間があります。待機期間は3日間なので、4日目以降に支給が開始されます。ただし、待機期間の3日間は連続していなければいけません。その3日間が経過して、4日目から傷病手当金が支給されるのです。給与の支払いがあったかどうかは関係ないので、有給休暇や祝日、土日などの公休日も待機日数に含まれます。

条件4、休業中給与が支払われていないことです。

傷病手当金は、業務とは関係なくけがや病気になって休業せざるを得なかった場合に、その期間中の生活を保障する制度なので、給与が支払われている場合は保障の対象外となるのです。ただし、傷病手当金より支払われる給与の方が少ない場合は、差額分だけ支給されることとなります。また、就労せず任意継続の被保険者となっている間にけがや病気が発生した場合は、支給の対象外なので注意しましょう。

基本的に、仕事が原因でけがや病気になった場合は、労災保険の対象となります。しかし、仕事が原因で心身に無視できない疲れが生じ、仕事ができなくなるということもあります。特に、ストレスによるうつ病などがその代表でしょう。また、疲れのせいで足元がおぼつかなくなり、ケガをしてしまうということもあり得ます。ただし、これと仕事との因果関係は、証明するのが難しいものです。よく、うつになったことで労災を適用するかどうかは裁判にもなっています。しかし、裁判になると長い期間もかかるので、出来れば避けたい問う気持ちもあるかと思います。そのため、証明が難しい状態になった場合は専門機関等に相談される方も増えています。

タイトルとURLをコピーしました